「させていただきます」という表現は、ビジネスシーンや日常会話で頻繁に使われます。
相手への敬意や配慮を示す言葉として広く認識されていますが、その一方で「どういう時に使うのが正しいの?」「使いすぎると変かな?」と迷う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、「させていただきます」の正確な意味、適切な使い方、そして避けるべき誤用例までを詳しく解説します。
また、状況に応じた言い換え表現や、「いたします」との違いについても触れ、あなたが自信を持って「させていただきます」を使いこなせるようになることを目指します。
失礼にならない、相手に気持ちが伝わる敬語表現を習得するために、ぜひこの記事を参考にしてください。
「させていただきます」の正確な意味と敬語の分類
「させていただきます」は、現代日本語において非常に広く使われている表現ですが、その意味するところや文法的な位置づけを正確に理解している人は案外少ないかもしれません。
まずは、「させていただきます」が持つ核となる意味と、それが敬語体系の中でどのように位置づけられるのかを掘り下げてみましょう。
「させていただく」が持つ二つの意味
「させていただきます」という表現は、主に以下の二つのニュアンスを含んでいます。
これらの条件が揃う場面で使うのが、基本的なルールとなります。
-
相手や周囲の許可・許容を受けて、ある行為を行う
最も基本的な意味合いは、文字通り「相手に許可や承諾をもらった上で、その行為を行う」というものです。
何かをするにあたって、相手の同意や了解が必要な状況で用いられます。「許可なく勝手にするのではなく、あなたの承諾を得てから行います」という、相手への配慮と丁寧さを示す表現です。
例えば、会議で発言する際に「ご質問させていただけますでしょうか?」と言うのは、相手(議長や参加者など)に発言の許可を求める意図が含まれています。
また、会社を休む際に「お休みをとらせていただきます」と言う場合は、会社や上司の承認を得て休む、という意味合いが込められています。 -
その行為を行うことで、話し手自身が恩恵を受ける
二つ目の意味合いは、ある行為を行うことによって、話し手自身が何らかの利益や便宜、好意といった「恩恵」を受けるというものです。
行為の結果、話し手にとってメリットがある場合に用いられます。
例えば、資料を使わせてもらう際に「この資料を使わせていただきます」と言うのは、その資料を使うことで自分の仕事がはかどるなど、何らかの恩恵を受けるからです。
また、会議に参加する際に「本日の会議に参加させていただきます」と言うのは、会議に参加することで情報が得られたり、自分の意見を述べられたりといった恩恵があるためです。
これらの二つの条件、「許可」と「恩恵」が、「させていただきます」を適切に使う上での重要なポイントとなります。
ただし、現実の言語使用では、この二つの条件が厳密に守られているわけではなく、特に「恩恵」のニュアンスは薄れて使われることもあります。
しかし、基本的な考え方としてこの二つの条件を意識することで、誤用を防ぐことができます。
敬語における「させていただく」の位置づけ
日本語の敬語には、主に「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の三種類があります。
「させていただきます」は、これらの分類の中で「謙譲語」に位置づけられます。
文法的に見ると、「させていただきます」は、「使役(〜させる)」の形に、謙譲語の補助動詞「ていただく」が付いた複合的な表現です。
- (私が)〜する → 尊敬語: 相手(が)〜なさる・お〜になる
- (私が)〜する → 謙譲語: (相手のために)〜する・お〜する・〜させていただく・〜ていただく・〜て差し上げる
- (私が)〜する → 丁寧語: 〜します・〜です
「させていただく」は、「(相手や状況によって)私に〜することを許してもらい、私は〜する」という構造であり、「〜する」という自身の行為を低めることで、相手や、行為が行われる場(会社、組織など)を立てる謙譲の気持ちを表します。
特に、「ていただく」という部分は、「(相手に)〜してもらう」という意味を持つ謙譲語であり、自分の行為が相手からの好意や許容に基づいていることを示します。
したがって、「させていただきます」は、話し手が自分の行為をへりくだることで、相手への敬意を示す謙譲語であると言えます。
ただし、その成り立ちに「使役」と「謙譲」が複合されているため、後述するように、二重敬語ではないかという議論も存在します。
「させていただきます」の正しい使い方と適切な条件
「させていただきます」という表現は、相手への配慮を示す丁寧な言葉として有効ですが、正しく使うためには、先述した「許可」と「恩恵」という二つの条件が満たされているかを確認することが重要です。
ここでは、それぞれの条件が満たされる具体的な場面と、その使い方について解説します。
相手の許可を得て行う場合
何かを始める前や行う際に、相手から明示的あるいは暗黙的に許可や承諾を得る必要がある状況で、「させていただきます」は適切に使われます。
例えば、
-
これから何かを始めるとき:
- 「ただ今より、会議を開始させていただきます。」(参加者の同意や了解を得て会議を始める)
- 「それでは、プレゼンテーションを始めさせていただきます。」(聴衆の了解を得て発表を開始する)
- 「恐れ入りますが、席を外させていただきます。」(会議中などに、周囲に断りを入れて一時的に退席する許可を得る)
-
相手のものを利用するとき:
- 「こちらの資料を使用させていただきます。」(相手の資料を使う許可を得る)
- 「お手洗いをお借りさせていただきます。」(相手の場所や物を借りる許可を得る)
-
変更や決定を報告するとき(既に許可を得ている、または得るべき状況):
- 「〇〇様にご承諾いただきましたので、この内容で進めさせていただきます。」(相手の許可を得た決定事項を進める)
- 「規約に則り、このように対応させていただきます。」(ルールに基づいた対応を行うことに対し、相手の理解や同意を求めるニュアンス)
これらの例では、いずれも行為を行う前に相手の許容や同意、あるいはそれに類する前提(ルールに基づいているなど)が存在します。
許可を得るプロセスが会話や手続きの中で明確に行われている場合だけでなく、「席を外す」のように、その場にいる人たちに「行ってきます」と伝えることで暗黙の了解を得る、といった場面でも使われます。
重要なのは、その行為が自分だけで勝手に行えることではなく、相手の意向や状況を考慮する必要があるということです。
相手への敬意として、「一方的に行うのではなく、あなたの了解を得てから(あるいは得た上で)行います」という姿勢を示すのが、「させていただきます」を使う際の基本的な考え方です。
行為によって恩恵を受ける場合
ある行為を行うことで、話し手である自分自身が利益、便宜、機会、経験などの好ましい結果や恩恵を受けるという状況でも、「させていただきます」は適切に使われます。
この場合、「許可」の要素は必ずしも明確でなくても構いません。
行為の結果として得られる恩恵への感謝や恐縮の気持ちを込めて用いられます。
例えば、
-
何かに参加するとき:
- 「この度のプロジェクトに参加させていただきます。」(参加できる機会を与えられたことへの感謝や、そこから得られる経験や知識への恩恵)
- 「貴重なセミナーに参加する機会をいただきまして、誠にありがとうございます。」(この場合は「参加させていただく」という行為自体が恩恵)
-
提供されたものを受け取るとき/利用するとき:
- 「お土産を頂戴させていただきます。」(「頂戴する」だけでも謙譲語だが、「させていただく」を付けることで、さらに恐縮や感謝の念を強調)
- 「お送りいただいた資料を拝見させていただきます。」(資料を見ることで情報が得られるなどの恩恵)
-
特定の役割や任務を引き受けるとき:
- 「この度、チームリーダーを務めさせていただきます。」(チームリーダーという重要な役割を担う機会を与えられたことへの感謝や責任感)
- 「僭越ながら、ご挨拶をさせていただきます。」(挨拶をする機会を与えられたことへの感謝、または人前で話すという行為による経験など)
これらの例では、話し手は行為の結果として何らかのプラスになります。「〜する機会を与えてくれてありがとう」「〜することで私も助かります/学びになります」といった、相手への感謝や、その行為によって自分が得られる恩恵への意識が根底にあります。
「許可」と「恩恵」は、どちらか一方のみが強く表れる場合もあれば、両方のニュアンスが同時に含まれる場合もあります。
例えば、「プレゼンテーションを始めさせていただきます」という場合、聴衆の許可を得るという意味と、プレゼンテーションを行う機会を得たことによる恩恵(自己PR、情報共有など)の両方の側面があると考えられます。
適切な使用のためには、行う行為が相手の許容や意向に関わるものか、あるいはその行為によって自分が何らかの恩恵を受けるものか、という点を意識することが大切です。
「させていただきます」が不適切・失礼になるケース
「させていただきます」は、適切に使えば丁寧で謙譲の意を示す表現ですが、条件を満たさずに誤って使ったり、多用しすぎたりすると、かえって不自然で失礼に聞こえてしまうことがあります。
ここでは、「させていただきます」を使うべきではないケースについて解説します。
条件を満たさない誤った使用例
「させていただきます」が不適切になる最も一般的なケースは、前述した「許可」も「恩恵」も存在しない、単に自分が勝手に行う行為に対して使用する場合です。
相手の承諾も不要で、自分にとっても特に恩恵がない、ごく普通の行為に使うと、違和感が生じます。
誤った使用例と、適切な言い換えは以下の通りです。
不適切な例 | なぜ不適切か | 適切な言い換え例 |
---|---|---|
「明日の会議で資料を配らせていただきます。」 | 資料配布は基本的に許可や恩恵とは関係ない、単純な業務行為。 | 「明日の会議で資料を配布いたします。」 「明日の会議で資料を配ります。」 |
「本日は〇〇についてお話しさせていただきます。」 | 話し手が一方的に話す内容であり、許可や恩恵のニュアンスが薄い場合。 | 「本日は〇〇についてお話しいたします。」 「本日は〇〇についてお話しします。」 |
「後ほどメールを送らせていただきます。」 | メール送信は相手の許可を得て行うものではなく、単なる通知や連絡行為。 | 「後ほどメールをお送りいたします。」 「後ほどメールを送ります。」 |
「この件は私が担当させていただきます。」 | 自分の担当になったという事実を述べるだけで、許可や恩恵のニュアンスが薄い。 | 「この件は私が担当いたします。」 「この件は私が担当します。」 |
「資料が完成しましたので、確認させていただきます。」 | 自分が資料を確認するという行為であり、相手の許可や恩恵ではない。 | 「資料が完成しましたので、確認いたします。」 「資料をご確認くださいましたら幸いです。」 |
「お時間となりましたので、失礼させていただきます。」 | 自分がその場を去るという行為であり、相手の許可を得るものではない。 | 「お時間となりましたので、失礼いたします。」 |
これらの例のように、単に「〜します」「〜いたします」と表現すれば十分に丁寧であるにも関わらず、「させていただきます」を使ってしまうケースが多く見られます。
これは、「丁寧な言葉遣いをしよう」という意識が先行するあまり、「させていただきます」を便利な丁寧表現として使いすぎている結果と言えます。
許可や恩恵の条件を満たさない行為に対して「させていただきます」を使うと、以下のような印象を与えかねません。
- 大げさ・回りくどい: 単純な行為なのに、わざわざ「許可や恩恵を得て行う」というニュアンスを含ませることで、表現が大げさになり、かえって聞き手を戸惑わせる可能性があります。
- 慇懃無礼(いんぎんぶれい): 過剰な丁寧さが、逆に不自然さや嫌味として受け取られることもあります。「別に許可なんていらないのに」「そんなにへりくだらなくてもいいのに」と感じさせてしまうかもしれません。
- 自信がないように聞こえる: 自分の行為に対して「〜させてもらう」という言い方をすることで、どこか他人事のように聞こえたり、主体性がない印象を与えたりすることもあります。
多用による違和感や回りくどさ
もう一つの不適切な使い方は、「させていただきます」を一つの文章や会話の中で繰り返し多用することです。
例えば、「本日は、〜についてご説明**させていただきます**。まず最初に、この資料を**ご覧になっていただきます**。そして、この点の詳細を**お話しさせていただきます**。」のように、次々と「させていただきます」が続くと、非常に耳障りになり、文章全体の流れがぎこちなくなります。
このような多用は、聞き手に以下のような印象を与えます。
- 単調で稚拙な印象: 同じ表現ばかりが繰り返されると、語彙力が乏しい、あるいは考えながら話していない、という印象を与えてしまう可能性があります。
- リズムが悪い: 言葉のリズムが悪くなり、スムーズなコミュニケーションが妨げられることがあります。
- 内容が頭に入りにくい: 表現自体に意識が向いてしまい、話の内容に集中しにくくなります。
「させていただきます」自体は適切な状況であれば有効な表現ですが、連続して使うことは避けるべきです。
様々な言い換え表現(「〜いたします」「〜します」「〜です」「〜でございます」など)を使い分けることで、より洗練された、聞きやすいコミュニケーションが可能になります。
結論として、「させていただきます」は万能な丁寧表現ではありません。
必ず「許可」や「恩恵」という条件を満たす状況でのみ使用すること、そして、同じ文章や会話の中で多用しないことを心がけましょう。
「させていただきます」は二重敬語なのか?
「させていただきます」という表現が広まるにつれて、「これは二重敬語ではないか?」という疑問を抱く人もいます。
二重敬語とは、一つの語について同じ種類の敬語を二重に使ったもので、原則として避けるべきとされています(例:「お読みになられる」←「お読みになる(尊敬語)」+「〜られる(尊敬語)」)。
では、「させていただきます」は本当に二重敬語なのでしょうか?
文法的に見ると、「させていただきます」は「使役の助動詞『せる/させる』」に「謙譲語の補助動詞『ていただく』」が付いたものです。
- する → させる(使役) → させて+ていただく → させていただきます
ここで使われている「させる」は使役であり、敬語の種類(尊敬語、謙譲語、丁寧語)を示すものではありません。
「ていただく」は謙譲語です。
つまり、「使役+謙譲語」という組み合わせであり、一つの行為に対して同じ種類の敬語(例えば謙譲語を二重に)を使っているわけではありません。
この文法的な分析に基づけば、「させていただきます」は厳密には二重敬語ではないと解釈するのが一般的です。
文化庁の敬語に関する指針などでも、特定の文脈においては「誤りとは言えない」とされています。
しかしながら、なぜ「二重敬語ではないか」と感じる人がいるのでしょうか。
その理由は、主に以下の点にあると考えられます。
- 過剰な丁寧さ: 前述のように、許可や恩恵の条件を満たさない場合にまで多用されることで、必要以上に丁寧すぎると感じられ、それが「過剰な敬語=二重敬語?」という誤解につながる可能性があります。
- 音の響き: 「〜させていただきます」という長い響きが、必要以上に回りくどく聞こえ、それが二重敬語のような不自然さを感じさせるのかもしれません。
- 新しい表現への抵抗感: 伝統的な敬語表現(いたします、申し上げますなど)に比べて、比較的新しく広まった表現であるため、規範意識の高い人の中には抵抗を感じる人もいます。
したがって、「させていただきます」は文法的には二重敬語ではないというのが主流の見解ですが、使い方によっては過剰な丁寧さから不自然に聞こえたり、人によっては二重敬語のように感じたりすることがある、というのが実情です。
使う場面と頻度を適切に判断することが、「させていただきます」をめぐる誤解や違和感を避ける上で重要となります。
「いたします」との違いと適切な使い分け
「させていただきます」と同様に、自身の行為をへりくだって相手への敬意を示す謙譲語に「いたします」があります。
「いたします」は、「する」の謙譲語「いたす」に丁寧語「ます」が付いた形です。
これら二つの表現は似ているように見えますが、明確な違いがあります。
それは、「許可や恩恵のニュアンスを含むか含まないか」です。
表現 | 意味合い | 主な機能 | 適切な使用場面の例 |
---|---|---|---|
〜いたします | 単純に自分の行為をへりくだって述べる。 | 自分の行為に対する謙譲(へりくだり)。 | 単純な業務連絡、報告、行動表明など、相手の許可や恩恵を特に意識しない場面。 |
〜させていただきます | 相手の許可や許容を受けて行う。 その行為によって自分が恩恵を受ける。 |
相手への配慮、感謝、恐縮の念を示す。 行為の背景にある許可や恩恵を強調。 |
相手の同意や了解が必要な場面、行為によって自分が利益を得る場面。 |
具体的な使用例で比較してみましょう。
-
資料を送る場合:
- 「後ほど、資料をお送りいたします。」:単純に資料を送るという行為を丁寧に述べているだけです。
- 「(先方の許可を得て)この度、弊社の資料を送らせていただきます。」:先方の許可を得た上で送る、または資料を受け取っていただくことで先方の役に立つ(先方が恩恵を受ける)というニュアンスを含む場合がありますが、一般的には「お送りいたします」で十分です。許可や恩恵のニュアンスが薄い場合は不適切になりがちです。
-
担当業務を述べる場合:
- 「私がこのプロジェクトを担当いたします。」:担当になったという事実を単純に謙譲して述べています。
- 「この度、〇〇様にご指名いただき、私が本件を担当させていただきます。」:相手からの指名という許可・機会を得て担当することになった、という恩恵のニュアンスが強く出ます。
-
質問する場合:
- 「いくつか質問がございます。」(「あります」の丁寧語)
- 「いくつか質問をさせていただいてもよろしいでしょうか。」:相手に質問をするという行為の許可を求めています。
-
意見を述べる場合:
- 「私の意見を述べさせていただきます。」:意見を述べる機会を与えられた、という恩恵のニュアンスや、その場で意見を述べることへの許可を求めるニュアンスを含みます。単に意見を述べる場合は「私の意見を申し上げます」や「私の意見をお話しいたします」の方が適切な場合が多いです。
行為 | 「いたします」での表現例 | 「させていただきます」での表現例(適切な場合) |
---|---|---|
報告する | ご報告いたします | (調査結果など、相手の了解を得て)ご報告させていただきます |
準備する | 資料を準備いたします | (相手の依頼を受けて)資料を準備させていただきます |
出席する | 会議に出席いたします | (参加の機会を得て)会議に参加させていただきます |
決定する | このように決定いたしました | (皆さんの意見を踏まえて)このように決定させていただきます |
連絡する | 明日、改めて連絡いたします | (先方の承諾を得て)後ほど改めて連絡させていただきます |
案内する | 会場までご案内いたします | (相手の依頼を受け、場所を空けてもらい)こちらへご案内させていただきます |
「いたします」は、自分の行為そのものをへりくだって表現する際に幅広く使えます。
一方、「させていただきます」は、行為の背後に「相手の許可」や「自分が受ける恩恵」といった特別な条件やニュアンスがある場合に、そのニュアンスを込めて用いることで、より相手への配慮や感謝の気持ちを伝えることができる表現です。
しかし、この特別な条件が満たされない場合に「させていただきます」を使ってしまうと、前述の通り不適切になります。
どちらを使うか迷った場合は、まずは「いたします」や「〜します」など、よりシンプルな謙譲表現を検討することをおすすめします。
許可や恩恵のニュアンスを特に強調したい場合にのみ、「させていただきます」を選択すると良いでしょう。
シーン別「させていただきます」の例文
「させていただきます」が適切に使用される具体的なシーンとして、ビジネスメールと会話を挙げ、それぞれの例文を紹介します。
また、「使用させていただきます」「参加させていただきます」「連絡させていただきます」といったよく使われるフレーズについても、具体的な状況とともに解説します。
ビジネスメールでの使用例
ビジネスメールでは、相手への丁寧さや配慮を示すことが特に重要です。
状況に応じて「させていただきます」を効果的に用いることで、相手との良好なコミュニケーションを築くことができます。
-
資料提供の許可を得た後:
件名:〇〇の件につきまして(資料送付)〇〇様
いつも大変お世話になっております。
△△株式会社の山田でございます。先日は〇〇についてお話しさせていただき、誠にありがとうございました。
ご要望いただきました資料につきまして、〇〇様にご確認いただきました内容にて、本日中にメール添付にて送付させていただきます。ご確認のほどよろしくお願い申し上げます。
(解説)
- 「お話しさせていただき」:お話しする機会を与えられたことへの感謝・恩恵のニュアンス。
- 「ご確認いただきました」:「してもらった」の謙譲語。
- 「送付させていただきます」:相手の要望に応える形(恩恵)で資料を送る、というニュアンス。許可というよりは、相手に便宜を図る行為。
-
企画提案の機会を得て:
件名:【△△株式会社】新規サービス企画のご提案〇〇様
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
△△株式会社の山田でございます。この度は、新規サービス企画のご提案の機会を**いただきまして**、誠にありがとうございます。
つきましては、添付資料にて弊社からの企画内容を**ご提案させていただきます**。来週、改めてご説明のお時間を**頂戴できれば幸いです**。
何卒よろしくお願い申し上げます。
(解説)
- 「機会を**いただきまして**」:提案の機会を与えられたことへの感謝・恩恵。
- 「ご提案**させていただきます**」:提案できる機会を得たことへの感謝・恩恵、または提案内容を受け止めてもらう許可を得るというニュアンス。
-
セミナー参加申し込み:
件名:〇月〇日開催セミナー参加のお願い〇〇様
貴社〇月〇日開催のセミナーにつきまして、ぜひ参加**させていただきたく**、ご連絡**いたしました**。
つきましては、参加申し込みの方法についてご教示**いただけますでしょうか**。
お忙しいところ恐縮ですが、何卒よろしくお願い申し上げます。
(解説)
- 「参加**させていただきたく**」:セミナーに参加できる機会を得たい、という意欲と、参加の許可を得たいというニュアンス。
- 「ご連絡**いたしました**」:単なる連絡行為なので「いたしました」が適切。
- 「ご教示**いただけますでしょうか**」:「教えてもらう」の尊敬+可能+丁寧。
会話における使用例
会話でも、相手との関係性や状況に応じて「させていただきます」を使い分ける必要があります。
特に目上の人や顧客に対しては、丁寧な印象を与えたい場面で有効です。
-
上司に報告・相談する際:
- 「〇〇部長、ご報告**させていただきます**。」(報告する機会を得たことへの感謝や、時間を取ってもらったことへの恩恵)
- 「こちらの件について、いくつかご質問**させていただいてもよろしいでしょうか**。」(質問する許可を求める)
- 「明日の会議の件ですが、資料の準備が整いましたので、ご確認**いただけますでしょうか**。」(「確認**させていただきます**」ではない)
- 「来週、出張で〇〇へ**行ってまいります**。」(「行かせていただきます」ではない)
-
顧客に対して:
- 「それでは、契約内容についてご説明**させていただきます**。」(説明する機会を与えられたことへの感謝、または内容を受け止めてもらう許可を得るニュアンス)
- 「本日、改めてお見積もりを**お送りさせていただきます**。」(後ほど送るという行為は「お送りいたします」で十分だが、相手の要望に応える、便宜を図るという意味で「させていただきます」を使う場合がある)
- 「この度は、弊社サービスをご利用**いただきまして**、誠にありがとうございます。」(相手の行動に対する感謝)
- 「今後とも、引き続きどうぞよろしくお願い**いたします**。」(結びの挨拶では「いたします」が一般的)
-
会議やプレゼンテーションで:
- 「本日は、〜について**お話しさせていただきます**。」(話す機会を得たことへの感謝・恩恵)
- 「少し時間を**頂戴できますでしょうか**。」(時間をください、の丁寧な言い方。許可を求めている。)
- 「皆様からのご意見を**伺わせていただきます**。」(意見を聞く機会を得る恩恵や、聞くことへの許可)
「使用させていただきます」「参加させていただきます」「連絡させていただきます」などの具体例
よく使われる「させていただきます」を含むフレーズについて、より具体的な状況と例文を見ていきましょう。
-
「使用させていただきます」
- 状況: 相手の物、情報、場所などを借りたり、使ったりする際に、許可を得て行う、あるいは使うことによって自分が恩恵を受ける。
- 例文:
- 「〇〇様からお借りしたペンを**使用させていただきます**。」(借りたペンを使う許可を得ている)
- 「このデータを分析に**使用させていただきます**。」(データを使うことで分析が進むという恩恵)
- 「会議室を〇時から**使用させていただきます**。」(会議室の使用許可を得ている)
-
「参加させていただきます」
- 状況: 会議、イベント、プロジェクトなどに加わる際に、参加の機会を与えられたことへの感謝や、そこから得られる恩恵。
- 例文:
- 「明日の会議に**参加させていただきます**。」(参加の機会を得たことへの感謝)
- 「この度、新規プロジェクトにメンバーとして**参加させていただきます**。」(メンバーとして参加できることへの恩恵や、任命されたことへの感謝)
- 「懇親会にぜひ**参加させてください**。」(参加の許可を求めている)
-
「連絡させていただきます」
- 状況: 相手に改めて連絡をする際に、連絡することへの了解を得る、あるいは連絡することによって相手に情報を提供する(相手が恩恵を受ける)というニュアンス。ただし、単なる連絡行為の場合は「連絡いたします」の方が自然なことも多い。
- 例文:
- 「詳細が決まり次第、改めて〇〇様へ**ご連絡させていただきます**。」(連絡することへの了解を得ている、または情報提供という形で相手に便宜を図る)
- 「明日、山田の方からお電話にて**ご連絡させていただきます**。」(担当者からの連絡という便宜を図る)
- 不適切な例: 「確認のため、**ご連絡させていただきます**。」(単なる確認の連絡であり、許可や恩恵のニュアンスが薄い → 「確認のため、**ご連絡いたしました**。」が適切)
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「説明させていただきます」
- 状況: 相手に何かを説明する機会を得たことへの感謝、または説明を聞いてもらう許可を得るニュアンス。
- 例文:
- 「本日は、弊社の新サービスについて**ご説明させていただきます**。」(説明できる機会を得たことへの感謝・恩恵、または聞いてもらう許可を得るニュアンス)
- 「ご不明な点について、詳しく**説明させていただきます**。」(疑問を解消するという恩恵を相手に与える)
-
「拝見させていただきます」
- 状況: 相手から受け取った書類や情報を「見る」際に、見る機会を与えられたことへの感謝、または見ることによって情報が得られる恩恵。
- 例文:
- 「お送りいただいた資料を**拝見させていただきます**。」(資料を見る機会を与えられた、情報が得られるという恩恵)
- 「企画書を提出**いたしました**ので、お時間のある時に**ご拝見いただけますでしょうか**。」(「拝見させていただきます」は自分が相手のものを見る時。「ご拝見いただく」は相手が自分のもを見る時。尊敬語の「ご〜いただく」を使う。)
-
「提案させていただきます」
- 状況: 相手に企画やアイデアを提案する機会を得たことへの感謝、または提案を聞いてもらう許可を得るニュアンス。
- 例文:
- 「この度、新たな改善策を**ご提案させていただきます**。」(提案の機会を得たことへの感謝・恩恵、または聞いてもらう許可を得るニュアンス)
- 「〜という点を踏まえ、このような企画を**提案いたします**。」(単に自分の考えを提案するという謙譲)
これらの例文から分かるように、「させていただきます」は、単に丁寧にするだけでなく、その行為の背景に存在する「許可」や「恩恵」といった相手との関係性や状況を反映させる言葉です。
適切に使いこなすことで、より細やかな配慮や感謝の気持ちを伝えることができます。
「させていただきます」の適切な言い換え表現
「させていただきます」は便利な表現ですが、前述のように誤用したり、多用したりすると不自然に聞こえることがあります。
状況に応じて他の表現に言い換えることで、より適切で自然な日本語になります。
ここでは、「させていただきます」の代替として使える様々な表現を紹介します。
より簡潔な言い換え
許可や恩恵のニュアンスが特に強くない、あるいは明確でない一般的な行為の場合、「させていただきます」よりもシンプルで適切な表現が多くあります。
「させていただきます」の不適切な例(または過剰な例) | より簡潔な言い換え表現例 |
---|---|
資料を配らせていただきます。 | 資料を配布いたします。 / 資料を配ります。 |
後ほど連絡させていただきます。 | 後ほどご連絡いたします。 / 後ほど連絡します。 |
こちらで確認させていただきます。 | こちらで確認いたします。 / こちらで確認します。 |
〇〇についてお話しさせていただきます。 | 〇〇についてお話しいたします。 / 〇〇についてお話しします。 |
この件は私が担当させていただきます。 | この件は私が担当いたします。 / この件は私が担当します。 |
それでは失礼させていただきます。 | それでは失礼いたします。 |
準備が整い次第出発させていただきます。 | 準備が整い次第出発いたします。 / 準備が整い次第出発します。 |
明日から新しいプロジェクトに取り組ませていただきます。 | 明日から新しいプロジェクトに取り組みます。 / 明日から新しいプロジェクトに取り組んでまいります。 |
これらの例のように、「〜いたします」や「〜します」は、自分の行為をへりくだって(謙譲)、あるいは丁寧に(丁寧語)表現する際に幅広く使える、より基本的な表現です。
多くの場合、「させていただきます」を使うよりも簡潔で分かりやすくなります。
特に「〜いたします」は、「する」の謙譲語「いたす」と丁寧語「ます」の組み合わせであり、「させていただきます」と同様に謙譲の意を含みますが、許可や恩恵といった特定の条件は伴いません。
そのため、ビジネスシーンでの自分の行動を表す基本的な謙譲表現として非常に汎用性が高いです。
「〜します」は丁寧語であり、謙譲語ほどのへりくだりはありませんが、日常的な丁寧な表現として十分です。
社内の同僚や、比較的フランクな関係性の相手に対しては、「〜します」も適切な場合があります。
状況に応じた別の表現
許可や恩恵のニュアンスが含まれる場合でも、「させていただきます」以外の表現で同様の意図を伝えることも可能です。
また、「〜いたします」や「〜します」以外にも、より具体的な状況に合わせた様々な表現があります。
「させていただきます」の意図(許可・恩恵など) | 状況に応じた言い換え表現例 |
---|---|
(許可を得て)〜する | ・〜させていただけますか?(許可を求める) ・〜させてください(許可を求める) ・〜する許可を頂戴しました。 ・(〜するよう)お許しいただきました。 |
(恩恵を受けて)〜する | ・〜する機会をいただきまして、ありがとうございます。 ・〜させていただき、感謝申し上げます。 ・大変光栄に存じます。(役割などを任された場合) |
(目上の人から依頼を受けて)〜する | ・承知いたしました。 ・かしこまりました。 ・謹んでお引き受けいたします。 |
(相手に便宜を図る)〜する | ・〜ように手配いたします。 ・〜ように対応いたします。 ・〜をお持ちいたします。 |
(自分が代表して/責任を持って)〜する | ・私が責任を持って〜いたします。 ・弊社にて〜させていただきます。(企業を代表して行う場合に、許可や恩恵のニュアンスを含む) |
(継続的な取り組みを始める/続ける)〜する | ・今後〜してまいります。 ・引き続き〜努めてまいります。 |
(挨拶や自己紹介)〜する | ・〜と申します。 ・ご紹介にあずかりました、〇〇です。 ・僭越(せんえつ)ながら、一言ご挨拶申し上げます。 |
(何かを見せる/提示する)〜する | ・資料をお見せいたします。 ・こちらをご覧ください。(資料や物を示す場合) |
このように、「させていただきます」を使わずとも、様々な言葉やフレーズを組み合わせることで、許可や恩恵のニュアンス、相手への配慮、自分の行為への謙遜など、伝えたい意図を表現することができます。
例えば、「このプロジェクトに**参加させていただきます**」は、単に「このプロジェクトに**参加いたします**」と言うよりも、「参加できる機会を与えられたことへの感謝」という気持ちが強く出ます。
これを別の言葉で表現するなら、「この度、プロジェクトに参加する機会を**いただきまして**、誠にありがとうございます。
精一杯**努めてまいります**。」のように、感謝の言葉と意気込みを具体的に伝えることで、「参加させていただきます」に込められた思いをより明確に伝えることができます。
言葉の選択肢を増やすことで、より多様な状況に対応し、相手に正確かつ自然な形で自分の気持ちや状況を伝えることが可能になります。
「させていただきます」に頼りすぎるのではなく、その状況で最も適切で簡潔な表現を選ぶように心がけましょう。
「させていただきます」に関するQ&A
「させていただきます」という表現について、多くの方が疑問に思う点をQ&A形式で解説します。
「させていただきます」を多用しすぎるのはなぜ避けるべきですか?
「させていただきます」を多用すると、文章や会話が不自然になり、かえって聞き手に違和感を与えてしまうからです。
適切な使い方を心がけても、連続して使ったり、本来必要のない場面で使ったりすると、以下のような問題が生じます。
- リズムが悪くなる: 「〜させていただきます、〜させていただきます」と続くと、単調で耳障りになります。
- 回りくどい印象: シンプルに表現できることを、わざわざ許可や恩恵のニュアンスを含ませて長く言うため、冗長に感じられます。
- 慇懃無礼に聞こえる: 必要以上に丁寧すぎると、かえって皮肉のように聞こえたり、相手を遠ざけるような印象を与えたりする可能性があります。
- 自信がないように聞こえる: 自分の行動を「〜させてもらう」という表現ばかりで述べることで、主体性や積極性がないように受け取られることもあります。
特に、許可も恩恵もない単なる行動(例:「確認させていただきます」「連絡させていただきます」)にまで「させていただきます」を使うと、違和感は一層強まります。
多様な表現(「〜いたします」「〜します」「〜です」「〜でございます」など)を使い分けることで、スムーズで自然なコミュニケーションが可能になります。
上司や取引先など、目上の人にも使えますか?
はい、適切な状況であれば、上司や取引先など目上の方に対しても問題なく使えます。
「させていただきます」は謙譲語であり、自分の行為をへりくだることで相手に敬意を示す表現だからです。
特に、以下のような場合は目上の方に対して有効です。
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許可を得て行動する場合:
- 上司に「この件について、ご相談のお時間を**いただけますでしょうか**?」と許可を求めた後に、「それでは、明日10時にご相談**させていただきます**。」
- 取引先から「資料を送ってほしい」と依頼された際に、「承知**いたしました**。本日中に**送付させていただきます**。」(依頼に応じる=相手に便宜を図るという恩恵)
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重要な役割や機会を与えられた場合:
- プロジェクトリーダーに任命された際に、上司に「この度、リーダーという大役を**務めさせていただきます**。精一杯**努めてまいります**。」
- 取引先から特別な依頼を受けた際に、「このような貴重な機会を**いただきまして**、誠にありがとうございます。
誠心誠意**対応させていただきます**。」
ただし、前述の通り、許可や恩恵のニュアンスがない単なる行動に対しては、「〜いたします」の方がより自然な場合が多いです。
目上の方にこそ、適切な場面で適切に使い分けることが、洗練された言葉遣いとして評価されます。
書き言葉と話し言葉で使い分けは必要ですか?
基本的な意味やルールは書き言葉でも話し言葉でも同じですが、話し言葉の方がやや緩やかに使われる傾向があるかもしれません。
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書き言葉(ビジネスメール、公的な文書など):
より正確さや格式が求められるため、「許可」や「恩恵」の条件を意識して使うことが推奨されます。
不適切な使用は、読み手に誤解や不快感を与えやすくなります。
多用は避けるべきです。 -
話し言葉(会話、プレゼンテーションなど):
相手の反応を見ながら調整したり、相槌や表情で補ったりできるため、多少条件から外れても受け入れられやすい場合があります。
しかし、多用による聞き苦しさや、不自然な丁寧さは話し言葉でも避けたいところです。
特に、公式な場や目上の方との会話では、書き言葉と同様に適切な使用を心がけるべきです。
結論として、どちらの場合も「許可」と「恩恵」の条件を意識することが基本ですが、書き言葉の方がより規範意識を持って使う必要があると言えます。
話し言葉では、文脈や相手との関係性に合わせて柔軟に判断することも大切です。
最近よく聞く気がしますが、新しい言葉遣いですか?
「させていただきます」という表現自体は、決して新しい言葉遣いではありません。
古くから日本語に存在する文法構造に基づいた表現です。
しかし、近年、特定の場面や文脈で使われる頻度が格段に増えたため、「最近よく聞く」「新しい言い方だ」と感じる人が増えています。
この使用頻度の増加の背景には、以下のような要因が考えられます。
- 過剰な丁寧さ志向: 失礼になることを恐れるあまり、「丁寧にしておけば間違いないだろう」という意識から、安易に「させていただきます」が使われるようになった。
- マニュアル化の影響: 接客業などで、顧客に対する丁寧な表現として「〜させていただきます」がマニュアルに組み込まれ、それが広く普及した。
- あいまいさの回避: 「〜します」と言うと断定的に聞こえることを避け、相手の了解を得ている、あるいは相手の意向を汲んでいるというニュアンスを込めるために選ばれることがある。
- 謙譲の意の強調: 単なる「〜いたします」よりも、さらにへりくだった、または感謝の気持ちを込めた表現として意識的に使われるようになった。
このように、「させていただきます」自体は以前からある表現ですが、その使用範囲が拡大し、特定の場面で多用されるようになったことで、多くの人が注目するようになりました。
この変化に対して、肯定的に捉える人もいれば、不自然だと感じる人もいるのが現状です。
言語は常に変化するものであり、「させていただきます」の使用実態も時代とともに変化していく可能性があります。
しかし、現時点では、その言葉が持つ本来の意味や適切な使用条件を理解しておくことが、誤解なくコミュニケーションを行う上で重要です。
まとめ:「させていただきます」を正しく理解して使いこなすために
「させていただきます」は、現代日本語において非常に頻繁に使われる表現です。
相手への敬意や配慮を示し、自分の行為の背景にある「許可」や、その行為によって自分が受ける「恩恵」を表現する際に有効な謙譲語です。
「させていただきます」を適切に使うためのポイントは以下の2点です。
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許可・恩恵の条件を満たしているか確認する:
- 行為を行うにあたって、相手や関係者の許可・許容が必要か?
- その行為を行うことで、話し手自身が何らかの利益や便宜といった恩恵を受けるか?
これらの条件が満たされる場合に使うのが原則です。
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多用せず、状況に応じて言い換える:
- 一つの文章や会話の中で繰り返し使うのは避けましょう。
- 許可や恩恵のニュアンスが薄い、単なる行動の場合は、「〜いたします」「〜します」といったより簡潔な表現を使う方が自然です。
- 「〜させていただけますか?」「〜する機会をいただきました」「〜努めてまいります」など、状況に応じた様々な言い換え表現を活用しましょう。
「させていただきます」は、適切に使えば相手に対する丁寧な姿勢や感謝の気持ちを伝えることができる優れた表現です。
しかし、条件を満たさない状況で安易に使ったり、多用したりすると、かえって不自然さや不快感を与えかねません。
この記事で解説した意味、条件、誤用例、そして言い換え表現を参考に、ご自身の言葉遣いを振り返ってみてください。
「させていただきます」に振り回されるのではなく、相手との関係性やコミュニケーションの目的を考慮し、その状況で最も意図が正確に伝わり、かつ自然で心地よい表現を選ぶことが、敬語を使いこなす上で最も大切なことです。
言葉遣いは、相手への心遣いを形にするものです。
この記事が、「させていただきます」を含む敬語表現について理解を深め、より円滑で気持ちの良いコミュニケーションの一助となれば幸いです。